夜中に目が覚めてしまう…加齢による睡眠の変化と上手に付き合う方法
夜中に目が覚めてしまい、その後なかなか寝付けない、というお悩みをお持ちではないでしょうか。特に年齢を重ねると、このような夜間覚醒(やかんかくせい)が増える傾向にあります。
健康のために十分な睡眠をとりたいと思っていても、夜中に何度も起きてしまうと、疲れが取れず、日中の活動にも影響が出てしまうことがあります。しかし、これは加齢による自然な変化の場合もあれば、生活習慣や体の状態が影響している場合もあります。
この記事では、高齢者の方に夜間覚醒が増える原因や、ご自宅で無理なく試せる対策、そして医療機関への相談を検討する目安について、分かりやすくご説明します。
高齢者の睡眠、何が変わる?加齢による睡眠の変化
人の睡眠は、年齢とともに変化していきます。若い頃と比べて、必要な睡眠時間が短くなったり、眠りが浅くなったりすることが一般的です。
具体的には、次のような変化が見られます。
- 深い睡眠(ノンレム睡眠の段階3・4)が減る: 眠りが浅くなり、ちょっとした物音などで目が覚めやすくなります。
- 途中で目が覚める(中途覚醒)が増える: 夜中に一度も起きずに朝まで眠り続けることが難しくなります。
- 朝早く目が覚める(早朝覚醒)が増える: 若い頃よりも早い時間に目が覚めてしまい、その後眠れなくなることがあります。
- 睡眠時間が短くなる: 必要な睡眠時間自体が短くなる傾向があります。
- 眠りのリズムが変わる: 朝早く起きて夜早く眠くなる、というリズムに変化することがあります。
これらの変化は、病気ではなく、加齢による生理的なものです。そのため、「若い頃のように眠れない」と感じても、必要以上に心配する必要はありません。大切なのは、現在の自分にとって質の良い睡眠をとる工夫をすることです。
夜中に目が覚める主な原因とは?
加齢による自然な変化のほかに、夜間覚醒にはいくつかの原因が考えられます。ご自身の生活や体の状態を振り返ってみましょう。
- 生活習慣:
- 就寝前のカフェインやアルコール: これらは睡眠を浅くしたり、利尿作用で夜中にトイレに行きたくなったりすることがあります。
- 寝る直前の食事や熱いお風呂: 体が興奮したり、消化のために活動したりして、寝つきが悪くなったり途中で目が覚めたりすることがあります。
- 日中の活動量: 日中に体を動かす機会が少ないと、夜になってもなかなか眠気を感じにくくなることがあります。
- 昼寝のしすぎ: 長時間や夕方以降の昼寝は、夜の睡眠に影響を与えることがあります。
- 寝室の環境:
- 明るすぎる: 寝室が明るいと、脳が覚醒してしまいます。
- うるさい: 騒音があると、眠りが妨げられます。
- 温度や湿度: 部屋が暑すぎたり寒すぎたり、乾燥しすぎたりすると、快適な睡眠が得られません。
- 心や体の状態:
- ストレスや心配事: 精神的な緊張は、夜中に目が覚める原因となります。
- 体の痛みやかゆみ: 不快な症状があると、眠り続けることが難しくなります。
- 病気や服用中の薬: 高血圧や糖尿病などの持病、あるいは服用している薬の種類によっては、睡眠に影響が出ることがあります。夜間頻尿なども夜間覚醒の大きな原因の一つです。
- 睡眠時無呼吸症候群などの睡眠に関わる病気: 大きないびきをかく、睡眠中に呼吸が止まるなどの症状がある場合、睡眠に関わる病気が原因かもしれません。
これらの原因がいくつか組み合わさっていることもあります。ご自身の状況と照らし合わせて考えてみましょう。
自宅で無理なく試せる夜間覚醒対策
夜中に目が覚めてしまうことに対して、ご自宅で簡単に試せるいくつかの対策があります。無理のない範囲で、できることから取り入れてみましょう。
1. 寝室環境を整える
快適な寝室は、良い睡眠のために非常に大切です。
- 光: 寝室はできるだけ暗くしましょう。遮光カーテンを利用したり、豆電球を消したりすると良いでしょう。
- 音: 静かな環境が理想です。外部の音が気になる場合は、耳栓の使用を検討するのも一つの方法です。
- 温度と湿度: 快適な温度は一般的に夏は25~28℃、冬は18~22℃程度、湿度は50~60%程度と言われています。エアコンや加湿器、除湿器などを利用して調整しましょう。
- 寝具: ご自身に合った枕やマットレスを選ぶことも快適な睡眠につながります。
2. 就寝前の過ごし方を見直す
眠りにつく前の習慣は、夜間の睡眠に大きく影響します。
- リラックスする時間を持つ: 就寝前に、ぬるめのお湯(38~40℃程度)にゆっくり浸かる、好きな音楽を聴く、軽い読書をするなど、リラックスできる時間を作りましょう。
- カフェイン・アルコールを控える: 夕食後や寝る前には、コーヒー、紅茶、緑茶などのカフェインを含む飲み物や、アルコールは避けるようにしましょう。
- 寝る直前の飲食を避ける: 就寝直前の食事は避け、お腹が空いて眠れない場合は、消化の良いものを少量にとどめましょう。
- スマートフォンやパソコンの使用を控える: 寝る前にこれらの画面を見ると、ブルーライトの影響で脳が覚醒してしまうことがあります。就寝1時間前からは使用を控えるのが理想です。
3. 日中の過ごし方を工夫する
日中の過ごし方も、夜の睡眠の質に関わります。
- 規則正しい生活: 毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きるように心がけましょう。休日も大きく崩さない方が体内時計が整いやすくなります。
- 適度な運動: 日中に体を動かすことは、夜の良い眠りにつながります。散歩や軽い体操など、無理のない範囲で毎日続けられる運動を取り入れましょう。ただし、寝る直前の激しい運動は逆効果になることがあります。
- 朝日を浴びる: 朝起きたらカーテンを開けて自然の光を浴びましょう。体内時計がリセットされ、夜の眠りにつながります。
- 昼寝は短くする: もし昼寝をする場合は、15~20分程度の短い時間にし、午後3時以降は避けるのが良いでしょう。長い昼寝や夕方以降の昼寝は、夜の眠りを妨げる原因になります。
夜中に目が覚めてしまったら?
もし夜中に目が覚めてしまっても、無理に眠ろうと焦らないことが大切です。眠れないまま布団の中にいると、「眠れない」という焦りや不安が増して、かえって目が冴えてしまいます。
15~20分経っても眠れない場合は、一度布団から出て、リラックスできることをして過ごしましょう。例えば、静かな音楽を聴く、温かいミルクやカフェインの入っていないハーブティーを飲む、軽い読書をするなどです。そして、眠気を感じたら再び布団に戻るようにします。ただし、強い光を浴びたり、脳を刺激するような活動(スマートフォン操作など)は避けましょう。
こんな時は専門家へ相談を検討しましょう
加齢による睡眠の変化は自然なことですが、夜間覚醒があまりにも頻繁に起こる場合や、次のような場合は、一度医療機関や専門家へ相談することを検討することをおすすめします。
- 夜間覚醒が長期間続いている: 眠れない状態が週に何回もあり、それが1ヶ月以上続いている場合。
- 日中の眠気が強い、または集中できない: 夜しっかり眠れていないために、日中の活動に支障が出ている場合。
- 他の体の症状がある: 足のむずむず感、胸の痛み、息苦しさなど、夜間覚醒と同時に他の気になる症状がある場合。
- 大きないびきをかく、睡眠中に呼吸が止まっていると指摘されたことがある: 睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害の可能性が考えられます。
- 持病があり、睡眠との関連性が気になる: 現在治療中の病気や服用中の薬が睡眠に影響しているか相談したい場合。
かかりつけ医に相談してみるのも良いでしょう。睡眠に関する悩みを話すことで、原因が見つかったり、適切なアドバイスや治療につながったりすることがあります。必要に応じて、睡眠専門の医療機関を紹介してもらうことも可能です。
まとめ
夜中に目が覚めてしまうことは、特に年齢を重ねると経験しやすくなるものです。加齢による自然な変化もあれば、生活習慣や体の状態が関係していることもあります。
この記事でご紹介したように、寝室環境や日中・就寝前の過ごし方を見直すことで、睡眠の質を高め、夜間覚醒を減らすことができる場合があります。ご自身に合った方法を無理なく試してみてください。
もし、夜間覚醒が続いて辛い、日中の生活に影響が出ている、他の症状も気になるという場合は、一人で悩まずに医療機関や専門家にご相談ください。適切な対応をすることで、今よりも快適な睡眠を取り戻せる可能性があります。あなたの快眠をサポートするための第一歩として、ぜひ参考にしていただければ幸いです。